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より良い矯正治療の普及のために -Good Orthodontic Treatment Always-

日本矯正歯科専門医名鑑 
Japan Super Orthodontists
 

日本矯正歯科専門医名鑑制作委員会

 

 


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矯正歯科医の種類

 矯正歯科専門医の評価はなぜ必要か?

 
 日本の歯科医師法によりますと、歯科医師免許を持つ者は歯科医学に関するあらゆる分野を自由に治療することが認められております。したがって歯科医師である限り矯正治療を手がけることは当然許されておりますし、法的には何ら制約を受けるものではありません。しかしながら今日のように医学が様々に細分化してきますと、たとえば皮膚科の医師にとっては眼科のことはほとんどわからない(治療に関してという意味です)と言うのと同じで、一般歯科医にとっては矯正治療はブラックボックス化しているのが現状です。逆に矯正科医にとっては、歯科医師免許を取得して以来、虫歯の治療も、抜歯も、入れ歯を作ったこともないと言う人がほとんどで、通常の歯科医師としては診療不可能な状態となっております(もちろん簡単な処置はできるのですが)。そればかりでなく、一般歯科治療におきましても、歯周病、再生歯科、インプラント(人工歯根)、顎関節症の治療など細分化専門化が年々進んでおり、それぞれの最先端治療は各科の専門医でなければ難しいというのが現状です。
 となりますと、各科の専門医の育成には、それぞれ時間、教育のための労力が必要となりますし、歯科医師の技術と経験の達成段階の評価が必要となってきます。つまり”自称専門医”が巷にあふれるようでは、その分野の治療そのものの評価が下がることになりますので、質の維持という観点から各学会は専門医の育成に力を入れております。
 
 

現状の矯正歯科専門医制度はどうなっているのか?

 
 日本において矯正歯科治療に関係する、学会、研究会などが相当数存在しています。それぞれに設立目的があり、有意義な活動をしていることは事実ですが、各団体がそれぞれ認定医、指導医、専門医と称する資格を発行しておりますので、一般国民においては非常にわかりにくい混沌とした状態になっております。
 しかしながら、数少ない例外を除いて、日本の矯正歯科に関係する歯科医師、デンタルスタッフ、関連メーカーなどで、日本矯正歯科学会に所属していないと言うことは通常あり得ないと考えられます。日本矯正歯科学会は総会員数約6000人を有する日本の矯正歯科界を代表する最大にして、最も歴史ある学術団体ですので、日本の矯正歯科分野については最も責任ある立場にあると考えて良いと思います。したがいまして、日本の矯正歯科分野における専門医の育成と質の維持に関しても、それにふさわしい信頼性があるものと考えるのが自然と考えられます。
 
 

日本矯正歯科学会では矯正歯科医をどのように育成しているのか?

 
 日本矯正歯科学会の専門認定制度は、学会として矯正歯科医の技術と経験を認定し、資格証を発行することにして、これを基に広く国民に矯正歯科医を選ぶための基準を提供しようとするものです。この制度は、日本のその他の専門認定制度に比べてもその基準が厳しく、高い技術と経験が要求されています。

1.日本矯正歯科学会認定医(最も基本的な資格)

 

認定医を取得するには次の条件が必要です

a. 歯科医師免許を有すること
 
 この条件は当たり前と言えば当たり前ですが、時々ニセ医者事件が世間を騒がせることもありますので、念のための確認という意味でしょう。
 
b. 歯科医師免許取得後、5年以上継続して学会会員であること
 
 矯正歯科医としてとして技術と経験を身につけるには、最低5年は必要であるという判断からでているものです。それで、なぜ5年なのかということですが、おそらく平均的な症状のケースを治すのに2年かけたとして、その後の経過を2-3年見ないと一つのケースをきちんと経験したことにならないという判断をしているものと考えられます。矯正の治療は器具がはずれた時点で終わりと言うことではなく、予後の安定(あるいは後戻り)といったものを経験しなければ一人前ではないという多くの矯正歯科医の価値観が反映されているものと考えられます。
 
c. 学会指定研修機関において5年以上矯正歯科研修を修了したもの
 
 この条件は、矯正の修行はどこでしても良いと言うことではなく、きちんと資格がある指導者についた上で、相当数の治療例を経験しなければならないと言うことでしょう。なお5年の研修期間は、最初の2年の基本研修期間と、その後の3年間の臨床研修期間に分けられています。基本研修は学会の認めた基本研修機関で勉強します。現状では各大学の歯科矯正学を教える医局だけが認められています。臨床研修期間は必ずしも大学病院でなくてもかまいません。臨床研修機関であることを認められた病院、診療所で働きながら研修することも可能です(ただしこの場合は、指導医または専門医の資格を持つ先生の下で研修することが必要です)。
 なおこの条件は最近改正され、上記の正規教育課程を経なくても、検定試験に合格すればそれに相当する実力があると判断する制度に変わりました。しかし検定試験にはいろいろ条件が付いていますので、最短で認定医を取得するには、やはり大学の医局で最低2年勉強した後、そのまま大学で臨床研修を続けるか、指導医または専門医の下で働きながら治療の腕を磨くのが早道でしょう。
 
d. 学会の認めた学術刊行物に矯正歯科臨床に関する報告を発表したもの
 
 この条件は腕さえ磨けばよいと言うことではなく、矯正歯科を学問として見る目も養ってほしいという願いを込めた条件と考えられます。また、どういう発表でも許されると言うことではなく、査読といって内容をきちんと吟味して採否や修正を決める委員会が、きちんと機能している本や雑誌にしか発表は認められていません。
 
e. 学会倫理規定を遵守する者
 
 これも当たり前の条件ですが、学会の会員として、歯科医師として、矯正科医として、社会人としてルールを守る人でないといけないという配慮からくる条件です。
 以上の点をすべて満たすと、学会認定医として資格証が交付され、公式に矯正歯科医として自分の判断で治療することができるようになります。
 

2.日本矯正歯科学会専門医(治療技術の優秀性を証明する資格)

さらに学会では、認定医の中で特別に技術と経験が優秀であるものを選抜して、日本矯正歯科学会専門医という制度を敷いています。日本矯正歯科学会専門医を取得するには次の条件が必要です

a. 日本矯正歯科学会認定医資格を有する歯科医師

 専門医は認定医の中から選ばれるので、いきなり専門医試験にチャレンジするという取得の仕方はできないと言うことです。認定医として治療の腕を磨きながら、いろいろな経験をしてから取得する資格というスタンスです。

b. 7年以上継続して学会会員である者

 専門医として十分な経験を積むには、最低このくらいの期間が必要ということです。幼児の骨格性反対咬合の治療などは、長ければ10年単位で考えなくてはなりません。若くして卓越した技術を持っている人もいるとは思うのですが、矯正治療はやはり年月が人を成長させる部分が大きいのです。

c. 学会の定めた10種類の課題症例を自分で治療し、その全ての治療結果が学会の定めた基準を満たして合格すること

 上記二つは条件としては当たり前で、認定医でそれなりの年齢になれば満たされる条件ですが、この10種類の課題症例を治すという条件が、専門医資格取得の最大の難関です。”専門医課題症例”のコーナーに詳しい解説がありますが、一つ一つの症例が条件的に厳しいものが多く、しかも治した経過だけをレポートにするだけではなく、治療前後の比較と治療後2年以上経っても良好な状態で維持されているという証拠を、すべて提出しなければなりません。石膏模型、写真、レントゲン写真などがすべて完璧な形でそろっていなければ、審査してもらえません。提出物だけでも相当な分量となりますので、試験会場には大型のスーツケースで持ち込むか、事前に段ボール箱に梱包し会場へ配送する必要があります。加えて提出する症例は自分で治したことを証明し、そのことに対するご同意を患者様から書面でいただかなくてはならないという条件まで付いています。つまり、良く治ったケースを別の先生から譲ってもらったり、患者様に黙って資料を提出したりと言うことは絶対にできないようになっているわけです。
 それだけでなく、審査の公平性透明性を確保するため、課題症例の採点は匿名で行われます。つまり、目の前のケースを採点するとき、そのケースを誰が治したのかは採点者にはわからないようになっています。これはどういうことかというと、有名な先生や大学の偉い人が受験者の場合、あの先生が治したんだから良いことにしようとか、目をつむろうとか言う心情的な配慮は一切入り込まないようになっていると言うことです。

LinkIcon日本矯正歯科学会専門医課題症例についての詳しい説明

d. 過去10年以内に学会の定めた刊行物、または学術集会において矯正歯科に関する発表をした者

 この条件は、治療技術に優れているだけでなく、矯正を学問としてみる目があり、なおかつ人に論理立てて説明する能力があることを証明するための条件と考えられます。

e. 学会倫理規定を遵守する者
 これは認定医の条件と同じです。

f. 他科の専門医を有していてもかまわない

 これは日本矯正歯科学会専門医の資格は、矯正治療に関する卓越した技術と、経験、能力があることを証明しているだけであって、他の治療をしてはいけないと言っているわけではないと言うことです。つまり、日本矯正歯科学会専門医資格を持ちながら、同時に小児歯科の専門医とか、口腔外科の専門医を持っていてもかまわないということです。”他の治療に手を出すようなものは専門医とは認めない”というような偏狭な考えは持っていませんと言うことですね。しかし実際には、専門医の資格を取るのは矯正治療に専念していてもなかなか難しいことですから、他科の資格も同時に取得している人はかなり珍しいと思います。

日本矯正歯科学会専門医委員会委員長の専門医審査に関してのコメント
 ー中略ー
「審査に関しては想定外の独自の判断で症例を提出される方も多いため、細則も適宜追加されており、厳しすぎるとか解りにくいというご指摘もありますが、ハードルを下げて合格者を増やすのではなく、高い目標や決められたルールに向かって努力する姿勢こそが、専門医として、技術的にはもちろん社会的にも倫理的にも求められていると思います。
 日本矯正歯科学会の専門医制度も4年を経て、日本歯科医学会に加え国際的にも高い評価を受けておりますので、ご理解とご支援の程よろしくお願い申し上げます。」
*January,2010,No.1 JOS Information letterより抜粋

(3) 日本矯正歯科学会指導医 (研修医を指導する資格)
 また専門医とは別に学会では、矯正歯科の研修医を指導監督する特別の教官資格として、日本矯正歯科学会指導医という制度を敷いています。指導医になるには、大学の矯正歯科において教育指導歴が3年以上あることが必要となります。

日本矯正歯科学会専門医と指導医・認定医はどう違うのか(区別)
 
 ここで多くの読者の方が迷われるのは、認定医よりも専門医と指導医がグレードの高い資格だと言うことは分かるが、では専門医と指導医の違いは何かと言うことでしょう。
 一言で言いますと指導医は、学問としての歯科矯正学と、治療学として矯正歯科学を研修医に教えるための教師であるということです。したがって研修医は指導医の下で勉強しないと認定医試験の受験資格が与えられません。そういう意味では指導医に課せられた教師としての責任は非常に大きいと言えます。ところが指導医になるには治療の技術が高いかどうかは問われていないと言う問題があります(大学に一定期間在籍すればよい)。教える技術と実際に治療する技術は必ずしも一致していないと言うことです。
 どの分野でも教師よりも勉強のできる学生、監督よりも優れた能力を持つ選手などがいるのと同じで、認定医の中には指導医以上の治療技能を持つものが少なくありません。そこで実際の治療技術に秀でたものを選抜したのが、”専門医”といえるでしょう。現役のプレーヤーとして一流であることを証明する資格と考えて間違いありません。
 ここでもう一つ注意しなければならないのは、いわゆる一般的な言葉としての”・・・専門医”と、日本矯正歯科学会専門医とは意味が全く異なると言うことです。広い意味において「私は矯正の専門医です」という言い方は、「矯正だけ診療している歯科医師です」という意味であって、日本矯正歯科学会専門医であるという意味ではありません。この点は非常に紛らわしいので注意が必要です。
 担当医の資格がわからない時には、はっきり尋ねてみても良いでしょう(矯正歯科専門の開業医院であれば、たいてい待合室に資格証が掲示してあります)。いずれにしても、安心して矯正歯科治療を受けるには”日本矯正歯科学会”の専門医、指導医、認定医にお願いした方が良いでしょう。