矯正装置の種類
近代矯正学が始まっておよそ100年が経とうとしています。現在主流のマルチブラケットを使う方法は、エッジワイズ法と言って、1926年にアメリカのE.H.Angleという歯科医師が発明しました。本人が発表時に「最新かつ最良の矯正装置」と自負したように、現在でも全く同じ仕組みの装置が使われています。ブラケットやワイヤーの素材は当時と比べると格段に進歩しているのですが、このアイデアを超える矯正装置は未だにありません。
ただし、現代の矯正学はすべてエッジワイズ法で行われるわけではなく、患者様のニーズや症状の状況に応じて様々な装置が使い分けられています。
マルチブラケット装置(透明タイプ)
永久歯列期の矯正に通常使用されるエッジワイズ法のマルチブラケット装置。歯の上に乗っかっている四角のボタンは「ブラケット」と言います。中央に溝が切ってあってその中を「アーチワイヤー」が通っています。アングルの時代は、ブラケットを直接歯に接着することができなかったので、バンドという金属のベルトを巻いて、その上に金属のブラケットを溶接して固定していました。今は、日本では透明なブラケットを直接貼り付けるやり方が主流です(Direct Bonding System:DBSと言います)。バンドを使う付け方ですと、すべての歯にブラケットを付けるのは、上手な人で半日、下手をすると丸一日かかったような大変な作業でしたが、DBSの発達で1-2時間くらいで付けられるようになりました。患者さんにとっても矯正歯科医にとってもとても便利な時代になりましたが、基本的なやり方はアングルの時代と何ら変わっていません。
ちなみにDBSは、日本発の発明です。東京医科歯科大学元教授 三浦不二夫 先生のチームが世界に先駆けて成功しました。日本の技術が世界の矯正の発展に大きく貢献したことは誇らしいことと思います。