日本矯正歯科学会専門医課題症例

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日本矯正歯科専門医名鑑 
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日本矯正歯科専門医名鑑制作委員会

 


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日本矯正歯科学会専門医試験の課題症例(10症例)

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(左:治療前、右:治療後)
第1症例 Class Ⅰ

出題基準:大臼歯関係class Ⅰで、下顎A.L.D.が-7mm以上または上下顎前突症例。抜歯・非抜歯症例は問わないが、できれば抜歯症例が望ましい。

出題の意味:奥歯の位置関係には異常はないが(classⅠの意味)、配列に凸凹がみられるケース。ALDとはArch length Discrepancyの略で、凸凹の程度を示す数値。-7mm以上は、一般的な感覚から言ってかなり凸凹していると感じる状態。上下顎前突とは、上も下も前歯が外側に傾いている状態を言う。前歯が外側に傾くと配列は広がるので見かけ上の凸凹は減るという関係が成り立つ。要するに、奥歯はあまり悪い関係ではないが、凸凹がひどいか前歯の傾きが悪いケースを、できれば小臼歯抜歯をして隙間を作って、残った永久歯を再配列して正しい咬合を作ったケースを示せという課題である。.

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(左:治療前、右:治療後)
第2症例 Class Ⅱ division 1 (F.M.A.35度以上)

出題基準:大臼歯関係がclassⅡで、F.M.A35度以上、Overjet 6mm以上、U1-SN 110度以上は必須条件で、できればANB 6度以上が望ましい。ただし抜歯、非抜歯は問わない。

出題の意味:大臼歯関係がclass Ⅱというのは、上の奥歯が下の奥歯よりも前にズレていることを示す。出っ歯の人はたいていそういう噛み合わせになっている。つまり出っ歯の症状は前歯だけがズレているのではなく、多くの場合奥歯もズレている。FMAとは顎の角度を示す項目だが、通常は30度以内で、35度を超えるケースはハイアングルケースといって矯正歯科医泣かせである。overjetとは前歯の先端同士が水平的にどれだけ離れているかを示す項目。6mm以上だと、かなり上の前歯の先端が下より前に出ていると見ていい。U1-SNとは上の前歯の傾斜を示す項目で、110度以上だと相当外に傾斜している。ANBとは上下の顎の位置関係を示す数値で、通常は3度くらい。数値が大きいと上顎前突の傾向があり、逆に小さいと下顎前突の傾向がある。
 つまり、第2症例は出っ歯の症状の中でも最難関に難しいケースと考えることができる。イメージ的には笑うと上の前歯が相当前に出ているのが誰の目にも明らかで、しかも顎が後ろに下がって唇がすごく閉じにくそうなケースといえる。

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(左:治療前、右:治療後)
第3症例 Class Ⅱ division 1(抜歯症例)

出題基準:大臼歯関係がclassⅡ、overjet 6mm以上、U1-SN 110度以上、ANB 6度以上が望ましいという条件は第二症例と同じ。FMAの条件がはずれた代わりに、抜歯ケースとして治療することを必須とする。

出題の意味:第2症例に比べると多少条件が緩和された平均的な出っ歯のケース。通常は抜歯して治すことが多いので、付帯条件としても難しさはない。矯正歯科医が日常的に良く遭遇しているケースといえる。第1症例と出題の意図としては同じで、おそらく日常的なケースとして、仕上がりの緻密性を評価する課題と考えられる。

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(左:治療前、右:治療後)
第4症例 Class Ⅱ divison 2 (overbite 5mm以上)

出題基準:大臼歯関係がclass Ⅱで、上顎中切歯1本を含む2本以上が舌側傾斜(U1-SN 90度以下)、犬歯関係もclass Ⅱであること。ただし、日本人では症例が少ないことを考慮して、U1-SN 100度以下のclass Ⅱ過蓋咬合も認める。抜歯・非抜歯は問わない。

出題の意味:このケースの条件は一般の人には理解しにくいところがある。通常出っ歯というと上の前歯が外に向かっていることを想像するのが普通であるが、U1-SNが90度以下というのは、上の前歯は内側に傾いていることを示している。なんで??。つまりこれは骨格性上顎前突と考えられるもので、上顎が歯並びごと全体が前へ出ていて、それだと上下の前歯があまりにも離れてしまうため、上の前歯が内側に倒れて下の前歯と何とか接触しようとしている状態と考えられる。
 しかし、出題基準にも書いてあるように、このケースは欧米の白人によく見られるケースで、東洋人にはきわめて稀である。そこで類似ケースとして過蓋咬合(かがいこうごう)のケースを代替えとして認めるという配慮をしている。過蓋咬合とは非常に強く深く咬んでいる状態を言う。Overbiteとは前歯の垂直的な重なり具合を示す数値で、5mm以上だと上の前歯が下の前歯をほとんど覆い尽くしている感じになるので、前から見ると下の前歯はほとんど見えない状態になる。こういう状態が典型的な過蓋咬合である。典型的なclassⅡ,division 2のケースは過蓋咬合を合併している。
 これも受験者にとっては難題のケースである。そもそもケースが見つからないのと、あったとしても治療の難易度が高いので、なかなか審査基準をクリアできない。第2症例以上に難しい課題といえる。

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(左:治療前、右:治療後)
第5症例 Class Ⅲ (非抜歯症例)

出題基準:大臼歯関係がclass Ⅲで、少なくとも前歯部が反対咬合または切端咬合で、ANB 0度以下が望ましい。

出題の意味:大臼歯関係がclass Ⅲというのは、下の奥歯が上に対して前にズレていることを示す。ANBとは上下の顎の位置関係を示す数値で、通常は3度くらい。数値が大きいと上顎前突の傾向があり、逆に小さいと下顎前突の傾向がある。条件的にはよく見られる反対咬合のケースなのだが、治療方法を非抜歯に限定しているところに難しさがある。日本人の反対咬合は多くの場合凸凹もひどいことが多いので、抜歯治療を選択する可能性が高い。したがって、非抜歯で治せる条件としては、上の前歯が内側に傾斜しているために反対咬合になっていると判断できて、矯正で上の歯を外に出して問題ないケースで、下の配列には凸凹がほとんどないものと言うことになるが、そういう好条件に恵まれているケースはあまりない。ケースに恵まれば、治療自体はそんなに困難ではないが、長い経験がないとケース的には恵まれないかもしれない。

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(左:治療前、右:治療後)
第6症例 Class Ⅲ (抜歯症例)

出題基準:大臼歯関係がclass Ⅲで、少なくとも前歯部が反対咬合または切端咬合で、ANB 0度以下が望ましい。条件は第5症例と同じだが、こちらは抜歯して治療して良い。

出題の意味:上の前歯が内側に倒れている、あるいは下の前歯が外に傾いていることが原因で反対咬合になっているケースを、抜歯して隙間を作って治して良いというのは、ごく日常的に行われる治療である。定番のケースをどこまで緻密に治せるかが評価の対象になる課題と考えられる。

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(左:治療前、右:治療後)
第7症例 開咬(overbiteがマイナスのもの)

出題基準:Overbiteがマイナスであることが必須。0mmは認めない。水平的開咬のみのケースは不可。

出題の意味:開咬とは奥歯がしっかり咬んでも(完全に閉じても)、前歯が上下的に重ならないケースを言う。Overbiteがマイナスというのは全然重なっていないということを示しており、マイナス方向に数字が大きくなるほど症状はきつくなる。つまり完全に閉じているのに、前歯の隙間から舌が見えるような状態と言うこと。この症状は、舌や唇の筋力や動かし方に原因があるので、歯を矯正するだけではだめで、舌や唇の動かし方を正常にしないと後戻りを起こしやすい。専門医の試験では、治療後2年以上経過した資料を添付して、経過が良好であることを証明しないといけないので、後戻りしやすいこのケースは難易度が高いといえる。舌や唇の動かし方をトレーニングするのは、医院スタッフ(主に筋機能訓練療法を担当する歯科衛生士)であるので、医療機関の総合力が問われる項目である。

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(左:治療前、右:治療後)
第8症例 早期治療症例

出題基準:乳歯列期もしくは混合歯列期から開始し、2段階で治療が行われたもので早期治療の意義がある症例。

出題の意味:骨格に異常が認められる咬合異常は、乳歯列であっても矯正治療の対象となる場合がある。放置された場合、将来的に外科矯正になるようなケースでも、適切な矯正治療で外科を回避することができる。そのような顎整形力を駆使した矯正治療例を提示する課題である。「早期治療の意味がある」という条件が付いているのは、ただ小さい時から見ていただけというのではだめで、小児期の治療をするかしないかで大きな違いが生じるようなケースでなければ対象にならないという意味である。
 例としては、上顎前方牽引を小児期に行って骨格性反対咬合を改善したものとか、ヘッドギヤで上顎前突を改善したケースなどが考えられる。

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(左:治療前、右:治療後)
第9症例 成人症例(20歳以降に治療を開始したもの

出題基準:歯周治療や補綴治療などの包括的な治療を行っているものが望ましい。包括的な治療であっても、部分的な矯正では不可で全体的な矯正治療を行ったものでなければならない。

出題の意味:矯正歯科医師として他科との連携を図りつつ、包括的な歯科医療として矯正治療をいかに応用できているかを問う課題。矯正の治療的には特別困難な内容ではないが、他科歯科医とのタッグがうまく組めていないと、審査基準がクリアできない課題である。

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(左:治療前、右:治療後)
第10症例 顎変形症もしくは唇顎口蓋裂に伴う不正咬合症例

出題基準:顎変形症の治療は、完全な顎離断術をするか、骨延長術を施術していること。唇顎口蓋裂の症例は、唇裂、粘膜下口蓋裂、軟口蓋裂を単独で有するものは不可とする。

出題の意味:いわゆる外科矯正を行った矯正治療例か、骨の形態に欠損が見られる病気のケースの矯正治療例を示す課題。両者とも保険治療の対象となっているので、一種の病的状態の治療といえる。矯正歯科医として一般的な意味で病気といえる状態の治療に、社会貢献できていることを示す課題と考えられる。

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